まずは、最近の4試合の流れを総括すると大体こうなると思う。
- ウルグアイ戦:若手のテスト
- ブラジル戦:勝てないブラジルは捨ててまたテスト
- ホンジュラス戦:ベテランのテスト
- オーストラリア戦:ベテランをベースに若手を混ぜる
ここまではテスト段階で、次のアジア杯がとりあえずの本番という感じだと思う。戦績は必ずしも良くないが、親善試合なのでそういう意味では気にする必要はないだろう。アギーレ監督は短期的な勝利にこだわるタイプかと思っていたが、四戦通して見れば割と手順を踏んだ長期的な選考をしており、ボランチの二人の代役が見劣りする点を除けば、まずますの流れ。若干若手のテスト枠から漏れている選手が多すぎる点や、若手じゃない選手を若手枠でテストしている点については憤りを感じる部分もあるが、そもそも以前の日本代表のやり方に比べれば、信じられないほど速い段階で若手のテストに踏み切っており、その点は今までの保守的な歴代の監督に比べて非常に革新的といってもいいだろう。
同じ選手選考でもポジションの違いがある
|
本田 |
香川 |
岡崎 |
今野 |
|
ザック |
トップ下 |
左SH |
右SH |
CB |
|
アギーレ |
右SH |
トップ下 |
CF |
ボランチ |
|
フォーメーションの違い
ザック:4-2-3-1 (本当は 3-4-3 がやりたかった)
アギーレ:4-3-3(オーストラリア戦では途中から 4-2-3-1 になった)
まず前提としてだが、このフォーメーションの数字というのは日本人が思っているほど決定的なものではないと思う。日本ではこの数字のならびに異常に固執しているが、実際の所同じシステムでも目指すサッカーのスタイルが違えば全く違うサッカーになる。例えば同じ 4-3-3 でも、バルセロナがやっている(4-6-0といわれる事もある)ようなチキタカもあれば、モウリーニョだって4-3-3を使うがやっているサッカーは全く別物だ。それどころか、マンU元監督モイーズがやっていた形だって4-3-3 。クロス主体でサイドからの攻撃をしても、ショートパスで崩しても、カウンターで崩しても4-3-3なのだから。もっというと昔のゾーンプレスのスタイルだってアンカーを1人おけば 4-3-3 なわけで。日本代表が長く使っている4-2-1-3だって4-3-3のすこしずれてる程度の形だが、やっぱりやってるサッカーは違う。同じペップのバルセロナとバイエルン(4-1-4-1)ではフォーメーションは違うが内容は似たものを感じる。結局フォーメーションなどよりも大きな戦術的な違いが別にあると言えると思う。
ここまで書いておいて言うのもなんだけど、アギーレも実は3-4-3に近いものを日本代表に持ち込んでいるところがある。例えば森重がボランチに入るのはスペインなどの3-4-3の場合ならばむしろ良く分かる話で、ボランチが半ばCBを兼ねた動きをする事で守備的に回った時にはDFが4枚になりような変化。3-4-3の以前のアヤックスだとライカールト、バルセロナではブスケッツがここを担っており、そういう意味では森重は、オーストラリア戦でもサイドで見せた突破のように足元の上手さがありながらフィジカルや高さを持ちCBとして普段プレーしているという十分その手のタイプに当てはまる選手だと思う。このスタイルだと遠藤長谷部のダブルボランチの後継者不足を解消はできるという利点がある。代わりが居ないならボランチを違う役目にしてしまえば確かに後継者不足を悩む必要はない。ただし、同時に決定的な守備力を持つ DF も不足している日本の場合、CBが不足してくる。吉田と森重以外で誰がCBをするのか、またSBに長友のような攻撃的過ぎる高い位置を取りたがる選手を配置できるのかなど、別の部分の問題が生じてくる。3-4-3の場合攻撃参加よりもSBもほぼCB的な動きが求められるので、身長の低い長友より酒井や大田が選ばれているのは、高さ対策という意味でもすっきりと理解できる。ボランチの後継者という課題だけに焦点を絞れば「なるほど」という形でもあったと思う。ただし、現実的には森重をあそこに置いた形にはCBの人材不足で守備力に常に課題を残すし、攻撃面でも森重が戦略的にパスを散す能力や前に鋭い縦パスを入れる能力などで、遠藤長谷部と比べるとどうしても見劣りしてしまうという点はあったと思う。するとボールが運べないので、トップ下が下がり結局森重とのダブルボランチになった後トップ下不在と言う感じに実際の試合ではなっていたと思う。その分パス交換でゆっくりトップ下の位置に入れるまでせり上がりやっと攻撃の形となるので、遅攻だとトップ下のない 4-2-3-1 のようになってしまっていたように思う。
オーストラリア戦では後半から今野を入れて香川を前に出やすい形にしたので、そういう意味では、ここに書いた話とは少し違う。
監督以前にメディカルスタッフの対応に不安の残る怪我人対策
日本代表がコンディション面で連戦により常に戦力ダウンをしてきた事を考えれば、長期的には選手のコンディションを悪化させない事が物凄く大事だろう。そういう意味では代表のメディカルスタッフの役割は監督以上に大きい。以前から代表戦後の怪我人の多さがクラブチームの感覚でみたら尋常ではない。常にかなりの数の怪我人がおりサッカー協会は親善試合の選手の管理は杜撰としか言いようがない。代表のメディカルスタッフは怪我に対して常にゴーサインを出すタイプのようなのも気になる。基本選手が出るといっても親善試合では直ぐに交代するべきだろう。特に海外組みの主力メンバーに関しては移動と試合日程が過密しており酷い状態になっている点をもう一度見てみるべきだろう。才能のある選手というのはそれ程数が居ない。使い捨てにしたら当然日本は弱くなる。そして現代表を見ても、本田、内田、長谷部、長友、香川とコンディションが慢性的に悪化している選手や回復の見込みが薄い選手が1人や2人ではない。これは致命的な問題なので、しっかり怪我人が出た時に休ませれる体制を作っておく事が戦術よりもアジア杯などでは遥かに重要になるだろう。そしてターンオーバをちゃんとする事で若手が育つ土壌も同時に用意する事が出来るのではないだろうか。