「高萩洋次郎のゴールがJリーグに突き刺したもの」

ACL1次リーグH組:鹿島1-3ウェスタンシドニー

 ウェスタンシドニーが「日本人助っ人」の活躍で敵地で鹿島を下した。後半9分に川崎Fから新加入のDF田中裕介(28)のロングスローから生じたゴール前の混戦で相手のオウンゴールを誘って先制。1-1に追いつかれたが、同41分に広島から加入したMF高萩洋次郎(28)がFWブリッジ(29)のミドルシュートのコースをゴール前で巧みに変えて決勝点を奪った。

 殊勲の高萩は「(来日して日本で試合するのは)不思議な感じでした。でも、日本は食事がおいしい。ACL初戦をアウェーで勝ててよかった」と笑みを浮かべると、田中も「ゲームのを通じてラッキーな部分もありましたけど、スタイルも違う中で相手に勝つために準備してきたし、それで勝てたことは大きい」と手応えを示していた。

http://www.nikkansports.com/soccer/news/1439147.html

Jのレベル低下

高萩洋次郎がウェスタンシドニーへ移籍した時、2chなどではステップアップではなくステップダウンではないか?などという事が言われていたが、その高萩がACLでJのチーム相手に1G1Aの活躍を見せた。これの意味する事はJにとっては割りと深刻な話ではないだろうか。まず考えられるのは「Jのレベル低下」そして「ACLのレベルの向上」。Jのチームがグループリーグの突破さえ怪しくなってきているという現状は、以前では考えられなかった。かなり優勝争いまでJのチームが絡んでいた頃から、ベスト4にはJのチームが行く時代が長く、最近のグループで落ちたり勝ち上がる前に下で負けてしまうというのは今までそれ程なかったが最近はその流れになりつつある。

ACLの話題性

更に重要な事は、同じ高萩洋次郎はつい最近までJにいたわけだが、このような注目を浴びる事はなかった。ACLにいくと恐ろしく注目を集めているという現実。メディアにとって「JリーグよりもACLの方が既にブランド価値が高くなりつつある」という事を意味していると思う。少なくともその要素がACLには満載されている。同時にアジアへの移籍も一定のレベルに達しているAリーグなどならば小野の例もあるように必ずしもステップダウンとも言えず、AリーグJリーグ双方にとってある程度の利点があるとも言えると思う。日本人所属のチームとACLで戦う事で話題性が圧倒的に高まるのだから。

ACLで勝てないのはなぜなのか

別の深刻な懸念としては、Jにいては高萩洋次郎が成長しなかったものがシドニーに移籍した事で成長したという可能性がある。これはJリーグの選手を育てる能力が劣っているという事を意味してしまうので相当に深刻だ。しかも実際にその可能性が十分ありえそうなのだ。なぜなら日本も欧州などと比べても若年層の育成に失敗しているとはいえないにも拘らず、20歳前後から伸び悩みJリーグに入る頃には明らかに欧州のリーグの若手と差が付いている。これは強豪チームがひしめく欧州と比べた時、高校卒業後からJリーグに入って数年での成長が小さいのではないかという事を暗示させる材料だと思う。

そしてJに前からいた高萩洋次郎がACLでもスタメンで出場し、しかも活躍してしまったという事は、同じ選手を使ってもシドニーの方が上手くチームが使いこなしたとも言える。この二つの点は何れも日本のサッカーの選手の質での差ではなく指導者や監督、コーチ、戦術などの部分に関係している。最近頻繁に言われるいわゆる「選手の個の能力」が低い事とは関係しない。なぜなら高萩洋次郎は日本にいた同じ選手だからだ。そろそろ「選手の個の能力」という選手の自己責任論に逃げるのは止めにしなければいけない。なぜ戦術的に負けてしまうのか、なぜ途中まで上手く行っていた育成が失敗するのか、しっかり考えるべきだと思う。「選手の個の能力の差」じゃあまりに身も蓋もない。

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